企業による個人データの第三者提供を停止させる具体的な方法
あなたの個人データ、他の会社に渡っていませんか?第三者提供停止権を知る
多くのオンラインサービスを利用していると、気づかないうちにあなたの個人データがサービス提供企業以外の第三者に提供されている場合があります。例えば、サービスの利用履歴や興味関心に基づいた広告が表示されるのは、あなたのデータが広告配信プラットフォームなどに提供されているためかもしれません。
このようなデータの第三者への提供は、適切に行われればサービスの利便性向上にもつながります。しかし、「自分のデータがどこに渡っているのか分からない」「不必要な第三者提供を止めたい」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
日本の個人情報保護法では、原則として本人の同意なく個人データを第三者に提供することは禁止されていますが、例外もあります。そして、多くの企業は、プライバシーポリシーなどで第三者提供の可能性について説明し、同意取得や、提供停止の機会を提供しています。特に、法に基づき、一定の条件を満たす場合には、本人からの求めに応じて第三者への提供を停止しなければならないと定められています。これが「第三者提供停止権」です。
この権利を行使することで、望まないデータ提供を止め、ご自身のプライバシーをよりコントロールできるようになります。この記事では、個人データの第三者提供を停止させるための具体的な手順と、その際の注意点について解説します。
個人データの第三者提供を停止するための具体的な手順
個人データの第三者提供を停止させたい場合、サービスを提供している企業に対して、停止を求める手続きを行います。具体的な手順は以下のようになります。
ステップ1:企業のプライバシーポリシーを確認する
まずは、停止したい第三者提供を行っていると思われるサービスのプライバシーポリシーを確認します。プライバシーポリシーには、企業がどのような個人データを取得し、どのように利用し、誰に提供する可能性があるのか、そして本人からの求めにどのように応じるのか(開示、訂正、利用停止、第三者提供停止など)が記載されています。
特に「個人データの第三者提供」に関する項目や、「本人が知り得る状態に置くべき事項」(個人情報保護法第21条第1項)として公表されている情報の中に、第三者提供の内容や、停止を求める際の手続き方法が示されていることが多いです。
ステップ2:問い合わせ窓口を探す
プライバシーポリシーや企業サイト内の「お問い合わせ」セクションなどから、個人情報に関する問い合わせ窓口を探します。通常は、専用の問い合わせフォーム、メールアドレス、あるいは電話番号が用意されています。停止請求は、原則として書面での提出が必要と定められている場合が多いですが、企業の案内に従って、メールや問い合わせフォームから受け付けている場合もあります。
窓口が見つからない場合は、サイトの一般的な問い合わせ窓口に連絡し、「個人情報の第三者提供停止を求めたい」旨を伝え、担当部署や専用窓口を教えてもらうようにします。
ステップ3:第三者提供の停止を求める意思表示をする
問い合わせ窓口に対し、個人データの第三者提供の停止を求める意思を明確に伝えます。この際、以下の点を記載するとスムーズです。
- 氏名、連絡先: 企業が本人確認を行い、連絡を取るために必要です。
- サービス名: どのサービスに関する第三者提供の停止を求めるのかを特定します。
- 停止を求めたい第三者提供の内容: 例えば、「利用履歴に基づいた広告配信のための第三者提供」「提携企業への顧客データ提供」など、可能な範囲で具体的に特定します。プライバシーポリシーに記載されている提供内容を参照すると良いでしょう。
- 停止を求める理由: 個人情報保護法に基づき第三者提供の停止を請求する場合、通常は以下のいずれかの理由に該当する必要があります(法第27条第2項)。
- 第三者提供の同意をしていないのに提供されている場合(オプトアウトなど、本人の同意が不要とされる一部のケースを除く)。
- 偽りその他不正の手段により個人データが取得されたものである場合。
- 利用目的による制限、適正な取得、または第三者提供の制限に関する規定に違反して個人データが取り扱われている場合。
- 請求者の個人データが利用されることにより、請求者の権利または正当な利益が害されるおそれがある場合。 ご自身の状況に合った理由を記載します。
問い合わせ時に使いやすいテンプレートのポイント:
企業が専用の請求書式を用意していない場合、以下の要素を盛り込んだ文章を作成します。
件名:個人データの第三者提供停止に関する依頼
〇〇株式会社 御中
私の個人データの第三者提供に関し、個人情報保護法に基づき、以下の通りその停止を求めます。
[あなたの情報]
氏名:〇〇 〇〇
住所:〒〇〇〇-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町〇〇... (企業が必要とする範囲で記載)
電話番号:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
メールアドレス:〇〇〇@〇〇〇.com
[対象となるサービス]
サービス名:△△(例:〇〇アプリ、〇〇通販サイト)
[停止を求めたい第三者提供の内容]
(例1)利用履歴に基づいたパーソナライズド広告配信を目的とした〇〇社への提供
(例2)提携する企業グループ内での顧客データ共有
(例3)プライバシーポリシーに記載されている「事業提携先へのデータ提供」のうち、〇〇に関するもの
[停止を求める理由]
(例1)同意した覚えがない第三者提供が行われているため。
(例2)個人情報保護法に違反して取り扱われている可能性があるため。(具体的な条項や状況を補足)
(例3)私の個人データが第三者に提供されることにより、私の権利または正当な利益が害されるおそれがあるため。(具体的な状況を補足)
お手数をおかけいたしますが、本請求に基づき、速やかに個人データの第三者提供を停止していただきますようお願い申し上げます。
また、停止措置が完了した際には、その旨をご連絡いただけますと幸いです。
なお、本書面での請求に加え、貴社所定の書式等がある場合はご指示ください。本人確認のために必要な情報がございましたら、別途ご連絡いただけますようお願い申し上げます。
ご多忙の折恐縮ですが、ご対応のほどよろしくお願い申し上げます。
[日付]
[あなたの氏名]
※ 上記はあくまで例文です。企業の指定する手続きや書式がある場合はそれに従ってください。
ステップ4:本人確認に応じる
企業は、請求を行っているのが本人であることを確認するために、本人確認書類の提出を求めることがあります。運転免許証や健康保険証、パスポートのコピーなどを求められるのが一般的です。企業から指示された方法に従って、正確な情報を提供してください。ただし、本人確認に必要な範囲を超えた過剰な情報の提供は避けるべきです。
ステップ5:企業からの応答を確認する
企業は、請求を受け付けた後、対応について連絡してきます。原則として、請求を受けた日から一定期間内(通常は2週間以内、事業者によっては1ヶ月以内など)に回答する努力義務があります。請求に応じ、第三者提供を停止した旨の連絡があるか、あるいは請求に応じられない場合の理由説明があるかを確認します。請求に応じられない場合は、その理由に納得できるかを確認し、不明な点があれば再度問い合わせることも可能です。
スムーズな手続きのためのヒントと注意点
- 問い合わせ先は具体的に: サービスごとの問い合わせ窓口や、個人情報に関する専用窓口を探すのが最も効率的です。一般的な代表窓口よりもスムーズに対応してもらえる可能性が高いです。
- 情報は正確かつ具体的に: どのサービスに関する、どのような第三者提供を停止したいのかを明確に伝えることが重要です。曖昧な表現では企業も対応に困ってしまいます。
- 対応に時間がかかる場合がある: 企業の規模や問い合わせ状況によっては、対応に時間がかかることがあります。一定期間待っても応答がない場合は、再度問い合わせて確認してみましょう。
- すべての第三者提供が停止できるわけではない: 法令に基づく場合や、サービスの提供に不可欠な場合など、個人情報保護法上の例外規定により、本人の同意や請求に関わらず第三者提供が認められているケースがあります。この場合は、停止請求に応じてもらえないことがあります。企業からの回答でその理由を確認してください。
- 記録を残しておく: いつ、誰に、どのような内容で請求したのか、企業からの応答はどのようなものだったのか、といったやり取りの記録を残しておくと、後々役立つことがあります。
自身のデータ権利を行使することの意義
個人データの第三者提供の停止を請求する手続きは、一見難しそうに感じられるかもしれません。しかし、これはあなたの個人データがどのように扱われるべきかについて、主体的に意思を示すための重要なステップです。この手続きを通じて、あなたは自身のデータに対するコントロールを取り戻し、より安心してサービスを利用できるようになります。
この記事でご紹介した手順を参考に、ぜひ一度、ご利用のサービスのプライバシーポリシーを確認し、必要に応じて第三者提供停止権の行使を検討してみてください。あなた自身のデータを守るための第一歩を踏み出すことを応援しています。他のデータ権利についても、当サイトの他の記事で詳しく解説していますので、ぜひそちらもご参照ください。